古代のイメージ
「色の黒いカラスが皆に好かれようと他の美しい鳥の羽をつけて着飾った・・・」
日本の童話にあるお話をご存知ですか?
色の黒いカラスは「縁起が悪い」「カラスが鳴けば人が亡くなる」など悪いイメージを持っておられる方が多いのではないでしょうか?
しかし、古代の人々はカラスに良いイメージを持っていました。「日本書紀」「古事記」ではカラスは神の使いとして登場します。ご存知でしたか?
「古事記」
ある日、神武天皇が紀の国(今の和歌山県)にお出かけになった時、神様から夢のお告げがもたらされます。「天から八咫烏(ヤタガラス)を使わそう・・」。すると・・・・おおきなカラスが現れ、道案内をしてくれました。
熊野の神々の使いとして、八咫烏は天皇の前に現れます。
「咫」とは長さの単位を表します。訓読みでは「あた」。「八咫」で「大きい」という意味になります。大きなカラスという意味です。
けれども、ここでは3本足のカラスとして登場します。これは中国の思想に太陽の中に3本足のカラスが住んでいるということからきています。3という数が陰陽道の中で縁起がよいからです。中国のまねをし、強大な国になりたい日本にとってこの思想を受入れるのはたやすいことだったのでしょう。太陽信仰が根強かったためとも考えられます。
つまり古代の日本人にとって、カラスは神の使いとして崇められる存在だったのです。
他にも
この他「万葉集」「枕草子」にも登場しています。
「枕草子」には「秋の夕暮れ、カラスが寝床に入る光景は、趣深い」と清少納言は述べています。清少納言のような貴族の周りにもカラスの巣があり、目に近いところで生活していたようです。昔からカラスは身近な鳥として人々に浸透していたのでしょう。
八咫烏とは?
さて、ヤタガラスの話が上で登場しましたが、どんなカラスでしょうか。「三本足のカラスなんか見たことない。、三本足のカラスって??」「どんなカラスか想像つかない・・」そんな声が今にも聞こえてきそうですね・・。
神戸の御影にある弓弦羽神社の方にお聞し、絵を頂きました。
矢に乗って天から降りてくる姿をイメージしてデザインされたそうです。
この神社では、毎年一月十四日にカラス様にお供え物をする行事も行っていらっしゃるそうです。
神社の幕にも使われているので、神社に行けば皆さんも見ることができると思います。楽しみと(長)寿とを加える非常に縁起のよい鳥だそうです。皆様もこのカラスを見て神幸を頂いて下さい。
最近のイメージ
神の使いとして崇められていたカラス、しかし今のように悪いイメージがついたのはいつからでしょう?
文献には江戸時代の頃からこのイメージが定着してきたようです。「朝カラスの声がうるさくて寝られなかった」と落語の題材として出てきたり、「吉原の花魁が寝られないとぼやいたり・・・」という文献が出てきます。それほど、カラスが人間にとって身近な存在となっていたことがわかります。この頃からカラスの鳴き声が人間の間でストレスとなっていたのでしょうか。
雑学
天皇の礼服の紋章にはこの3本足のカラスの刺繍が施されています。
皆さんの身近なところでは、サッカー日本代表のマークにもこの「八咫烏」が3本足そのまま使われています。
サッカー観戦の時、ちょっとした知識人になれるかもしれませんよ!